2014年9月16日火曜日

半端なことをすると誰かに迷惑がかかるという話。

 
 先日まで校正していたラノベのレーベルについての2chをチラ見していたら、同僚校正者の手がけた作品が「誤字脱字だらけ」と評されていた。
 同僚はとても真面目で丁寧で、そのレーベルのゴーマン編集者が「創刊時から取引をしているが、彼女は完璧」と称えるほどの人。雑な仕事をするはずがない。どうしてそのような事態となったのか。

 
 書籍も雑誌も校正ゲラはたいてい再校で終わるが、ものによっては色校や、たまに三校、大部になると四校まで出て、さらに念校なんてものまで出して確認に確認を重ねる。
 校正の手を離れたゲラは、あとの工程の人たち、すなわちDTPオペレータの手に渡り、指示のとおりに印刷用のデータを修正してもらう。ゲラは印刷所で責任校了(責了)となる。作品の最終的な完成度はDTPオペレータたちの仕事っぷりにかかっている。
   
 
 しかし今回、そのレーベルのラノベを初校 → 再校と見て、再校での初校直しの反映にDTPオペレータの根性が見えなかった。再校のひどさは、2chでの書かれようそのもの、まさに「誤字脱字だらけ」だった。
 見落としからくる直しモレに始まり、直しミスは誤字、脱字、誤混入はむろんのこと、ヒラく(漢字をひらがなに直す)指示なのにルビにしてきたりと、バリエーション豊か。こんな雑な再校を見たのは初めてだった。
 
 なぜこうなるのか? 例のゴーマン編集者が急がせたせいもあるだろう。どうせ再校でまた校正者が見るはずだし……という甘えもあったかもしれない。
 しかし、ひと通り終えたあとにモレがないか見直すぐらいのことはしないか? 残念ながら、初校ゲラにチェックマークのたぐいがないから、おそらくそのときのDTP担当者はそれをやっていないのだ。つまり必要な手順を省いた、手抜きをしたのだ。
 
 
 そのゴーマン編集者は、校正者に対して横柄ゆえ人気がないことで有名だった。DTPオペレータとの接し方はどうだろうか? 期待できないだろう。取引先がどんなにムカつくヤツでも仕事の手を抜くなど言語道断だが、人と人の問題だから、ああいう態度で接されたら手抜きも起こり得る。
 
 
  半端なことをすると誰かに迷惑がかかる。
  取引先と誠実なやり取りをしない編集者は、
  どこかにほころびを生じさせかねない。
 
  しかし、ほころびの一つとして誰かが手を抜いたら、
  その作品をより良いものにしようと努力した
  著者をはじめ多くの人の名誉と心が傷つけられる。
 
 
 人は常に、すべきことを真摯にやっていくしかない。仰いで天に愧(は)じず、と言えるようでありたい。
 
 
 

〔2018年、ブログ移転に際しての追記〕 


この記事は、
DTPオペレータさん方を責めている記事ではない。
 
ニュアンスが攻撃的で誤解を招きそうだが、
あくまで、ゴーマン編集者の態度がイカン、という記事である。
 
同僚校正者が2chで叩かれていた理由も、
DTP作業に関わりのある誤字脱字だけでない。
「内容の整合性がおかしい、それが直っていない」
と批判されていた部分もあった。
 
ここでの「内容の整合性」とは、
「その物語を1巻から読んでいる人にとっては当たり前の前提」
とか、そういうのが妙なことになっている、と
そういうことである。
 
ゴーマン編集者は、校正者に対して横柄で、
そして作家さんに対しても不親切な人物であった。
 
とある校正者は、そのゴーマン編集者が担当する
さる人気シリーズの第1巻から校正を任され、
どれだけ横柄に接されても、責任感から、
シリーズが10巻になるまで作業に関わった。
 
だが10巻で音を上げた。
あまりの塩対応に心身にダメージが来て、
そのゴーマン編集者と仕事をすることができなくなった。
 
2chで叩かれたという同僚校正者は、
体調不良(うつ)となった校正者のあとに、
その人気シリーズの校正を引き継いだのだ。
10巻ぜんぶを読み込む時間など与えてはもらえない。
校正はできても、校閲を完璧にこなすのは難しい。
読者のほうが、よっぽど内容に詳しいという状態だ。
 
作者のうっかり設定ミス・記述ミスをカバーするのは、
最初からすべての内容を把握している担当編集者の仕事でもあるのだが、
ゴーマン編集者もそれを見落としたのだろう。
 
だが、ミスがそのまま印刷されると、
それはすべて校正者のせいにされる。
できあがった本には校正者の名前も印刷されているので、
ますますタチが悪い。
 
 
そんなわけで、
これはあくまでも、
「仕事で関わる人にゴーマンな態度で接していいわけがないだろ!」
という根っこに基づいて、
「だけど、どんなに仕事相手がムカついても、
各人自分の仕事はきっちりこなそうや! 腹立つけどな!」
という話なのであった。
 
 
 
  

0 件のコメント:

コメントを投稿