昔々、ある大きな山のふもとに、働き者で心優しい若者が住んでいました。若者は早くに両親に死なれ、
その日も若者は、山に柴刈りをしに出かけました。お昼時、
すると、若者の背後から声がします。
「この老婆に、なにか食べるものを分けてくれないかい」
若者が振り向くと、みすぼらしい老婆が立っていました。
見れば、その腕は枯れ木のように痩せています。
翌日、若者はパンを4つ山に持って行きました。案の定、
若者がパンを2つあげると、老婆はその場でそれを食べ終え、
若者は家に帰ると、小麦の袋に残っていた粉の半分を使って、
そして3日目には、老婆に言われる前にそれを差し出しました。
ところが老婆はそれを食べずに、谷へと投げ捨ててしまいました。
若者が目を丸くしているうちに、
老婆は微笑みながら若者に告げました。
「近いうちに、ここを大きな災害が襲うだろう。
この亀を連れて行きなさい。亀の目が赤くなったら、
でも、誰にもこのことを話してはいけないよ。
そう言うと、老婆は小さなハチに姿を変え、
若者はその後も、変わらず山に仕事に出かけました。長い間、
もうすぐ村のお祭りだというころ、
若者は大慌てで荷物をまとめ、
そのとき、
「どんなときも、人様の役に立つことをするのですよ」
だけど村人に話せば、石にされてしまいます。
若者は悩んだすえ、村人に災害のことを話しました。
祭りの準備で盛り上がっている村人は誰も若者の話を信じてくれま
でも、若者が事の次第を話し、
村人みんなが蓮の湖に到着すると、すさまじい大音声がして、まるで空が落ち、地が沈むような光景が広がりました。豊かだった村は、一瞬で荒れ野になってしまいました。
亀も金色の光となって、若者の手から空に消えていきました。
おびえていた村人たちが我に返ったとき、
蓮の湖のほとりに、
村人たちは若者の供養のために松の木をたくさん植えました。
寧夏回族自治区のとある湖に、今もそれが残っているそうです。
出典:
『Mythology and Folklore of the Hui, A Muslim Chinese People』
pp155-157 「Naxigaer」
http://books.google.co.jp/
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