「好きな映画は?」という質問に出くわすと、私はたいてい『小説家を見つけたら』と答える。
『小説家を見つけたら』、原題 Finding Forrester は2000年公開のアメリカ映画。
ショーン・コネリーがちょいとクセのある大作家を演じる、味わい深い作品だ。
作品の見所にもふれて大々的にオススメしたいのだけど、それは次の機会にするとして。
今回は、その映画の音楽の話。
映画館でじんわり感動にひたるラスト。才能あふれる若き主人公は、大切な人との別れを乗り越えて、未来への決意を
新たにする。そんな余韻に包まれるエンディングで、ウクレレに乗せた男性アーティストの「虹の彼方に」が流れる。
ラストシーンからエンドロールにかけて流れるその歌声は、やさしいのにどこか寂しく、はるか遠くから懐かしく響くようでいて、
彼方へいざなうようで。うわあ、主人公の心情と境遇にすっごくマッチしているなあ~、と舌を巻いたものだ。
そんな感動があったからなのか、その男性アーティストの歌う「虹の彼方に」は強烈な印象を私に残した。
彼の歌うその曲を聴いたのはそれが初めてだったのだけど、それからというもの、「虹の彼方に」Over the Rainbow といえば、
彼の声をまず思い浮かべるようになってしまった。さまざまなアーティストがカバーし、合唱で歌ったことだってあるのに、
ほかのどのバージョンでもなく、彼のあの歌声、スウィングの曲調が、私にとっての代表格になってしまったのだ。
しかしそれだけ影響されていながら、アーティストが誰なのか調べることもせず、気付けば10年が経過していた。
しかし先日、ひょんなことから誰の歌声だったのかを知った。
ウクレレに Over the Rainbow とくれば、もうおわかりの方もたくさんいると思う。
そう、いまは亡きハワイの伝説的歌手、Israel "IZ" Kamakawiwo'ole(イズリアル・カマカウィウォオレ)だったのだ。
彼の歌声は「Tengoku kara kaminari(天国から雷)」という曲で、ひところしょっちゅう耳にした。
ハワイ出身の力士たちをリスペクトして「曙、武蔵丸 and 小錦」と歌っている、あれだ。
あの彼の歌だったとは! まさに「青天の霹靂」だった。
��Zは残念ながら、1997年に38歳の若さで亡くなっている。
死期を早めた遠因は肥満だというけど、体重が350kgほどあったというから、無理もない。
彼の声には確かに、体の大きな人に特有の少しくぐもった響きがある。
しかしそれが短所にならず、むしろおおらかな、温かい包容力のように感じられるのはなぜだろう。
決して誰のことも突き放さない、ありのままを認めてくれる……そんなふうに聴こえるのだ。
素直な発声、少し空気のまざった柔らかい声。聴く者をやさしく包み癒やす、天性の音色。
彼が亡くなったとき、ハワイでは半旗が掲げられたそうだ。
「Somewhere Over the Rainbow」は『Facing Future』というアルバムの中に、
「Tengoku kara kaminari」は『E ALA Ē』というアルバムの中におさめられている。
「E ALA Ē」とは、ズバリ「Thunder from Heaven」の意味。
Israel "IZ" Kamakawiwo'ole 「Somewhere Over the Rainbow」
ラストには、オアフ西部のマクアビーチでの彼の散骨式の様子が入っています。
全然悲愴ではなく、まるでお祭りのようです。まさにハワイ式。
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